【2026年最新】老朽化による賃貸の立ち退き料相場は?オーナーのための円満交渉術

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三枝隆賃貸経営・不動産投資担当ライター
元銀行員として金融の現場を経験し、現在は自身も不動産オーナーとして賃貸経営に携わっています。リスク管理と収支の両面から、堅実な不動産投資の考え方をお伝えします。休日は市場で食材を吟味して本格料理をしたり、家族で麻雀を楽しむ。

長年大切に所有してきたアパートやマンションも、築40年、50年と経過すれば、老朽化による修繕費の増大や、耐震性の不安に直面します。「そろそろ建て替えをしたい」「更地にして売却したい」と考えたとき、オーナー様の前に立ちはだかるのが「入居者様との立ち退き交渉」です。

「老朽化して危ないのだから、当然出ていってもらえるはず」と考えがちですが、日本の借地借家法では借主の権利が非常に強く守られています。円満な解決には、相場を理解した上での適切な「立ち退き料」の提示と、誠実な交渉プロセスが欠かせません。

今回は、2026年現在の市況を踏まえた立ち退き料の相場と、現場で培った「揉めないための交渉術」を詳しく解説します。

賃貸の老朽化による「立ち退き料」の相場と計算方法

立ち退き交渉において、オーナー様が最も気になるのは「一体いくら支払えば納得してもらえるのか」という点でしょう。立ち退き料には法律で定められた一律の金額はありませんが、実務上の「目安」は存在します。

一般的には「家賃の6ヶ月〜10ヶ月分」が目安

実務において、円満解決に至るケースの多くは「家賃の6ヶ月〜10ヶ月分」程度に収まることが一般的です。これは、借主が新しい住居に移転するために必要な「実費」に、一定の「見舞金(協力金)」を上乗せした金額となります。

最近の傾向として、都心部では賃料相場が上昇しているため、新居での「差額賃料」を考慮して、10ヶ月分程度の提示が必要になるケースも増えています。

立ち退き料の内訳(引越し代・仲介手数料・礼金・差額賃料)

立ち退き料は、主に以下の要素を積み上げて計算されます。

  1. 移転実費:引越し業者への費用(家賃1〜2ヶ月分相当)
  2. 新居の初期費用:仲介手数料、礼金、火災保険料、保証料など(家賃3〜4ヶ月分相当)
  3. 差額賃料:現在の家賃より新居の家賃が高くなる場合、その差額の1〜2年分
  4. 迷惑料・協力金:長年住み慣れた場所を離れることへの対価

これらを合算し、端数を調整して「一式〇〇万円」として提示するのがスムーズです。

「老朽化」は正当事由になるが、立ち退き料がゼロになるわけではない

「建物が古いから立ち退いてほしい」という理由は、法律上の「正当事由」の一つになり得ます。しかし、建物の老朽化だけで正当事由が100%認められることは稀です。

多くの場合、老朽化という「正当事由の不足分」を補完するために立ち退き料を支払う、という構造になります。耐震診断で「倒壊の危険性あり」と判定されているような深刻なケースでは、立ち退き料を抑えられる可能性もありますが、基本的には「金銭による補完」が必要であると考えておくべきです。

【現場の視点】立ち退き料が決まる3つの変数

私自身の経験上、立ち退き料は一律の計算式だけでは決まりません。以下の3つの変数をどう評価するかが、交渉の鍵を握ります。

1. 建物の危険度(倒壊の恐れがあれば正当事由が強まる)

建物の傷み具合を客観的に証明できる資料があるかどうかが重要です。単に「見た目が古い」だけでなく、耐震診断結果や、外壁剥落の調査報告書などがあると、交渉において「入居者の安全を守るための退去要請である」という強い根拠になります。

2. 借主の属性と居住年数(高齢者や長年居住者は配慮が必要)

特にお一人暮らしの高齢者や、30年以上住まわれている方の場合、金銭的な補償だけでは解決しません。「次の家が見つからない」「環境が変わるのが不安」という精神的なハードルが高いからです。こうしたケースでは、移転先の確保をオーナー様側で手厚くサポートすることが、結果的に立ち退き料を抑えることにつながる場合もあります。

3. オーナー側の事情(自己使用の必要性や建替え計画の具体性)

「ただ売りたいから」という理由よりも、「ここに自宅を建てて家族で住む必要がある」「具体的な再開発計画があり、行政の認可が降りている」といった具体的な利用計画がある方が、正当事由として認められやすくなります。

立ち退き料の支払いを踏まえた、最新の「出口戦略シミュレーション」を作成いたします。

揉めないための立ち退き交渉「3つの鉄則」

銀行員時代、多くの不動産融資に関わってきましたが、立ち退きで揉めてプロジェクトが頓挫する例を何度も見てきました。成功するオーナー様には共通の作法があります。

1. 「立ち退いてほしい」ではなく「相談がある」から始める

いきなり「○月までに出ていってください」という通知を送るのは、相手の防衛本能を刺激し、対立を生むだけです。まずは「建物の老朽化で修繕が難しくなり、皆様の安全に責任が持てなくなることを心苦しく思っている」という、申し訳なさと相談の姿勢を見せることが大切です。

2. 少なくとも「半年前」ではなく「1年前」から動き出す

法律上は6ヶ月前までの通知とされていますが、現代の賃貸市場で、特にお年寄りやペット連れの方が半年で納得のいく住まいを見つけるのは容易ではありません。1年間の猶予があれば、借主も心の準備ができ、更新時期に合わせた解約交渉など、柔軟な対応が可能になります。

3. 金銭以外の解決策(次の住まい探しサポート)をセットで提案する

「お金を払うから勝手に見つけてくれ」という態度は、最も嫌われます。 「スタートラインのような、地域に根ざした不動産会社を紹介し、優先的に物件を紹介させる」「新居の仲介手数料をこちらで負担する」といった具体的な「次の生活への橋渡し」をセットにすることで、交渉は劇的にスムーズになります。

【実践論】不動産会社と連携してスムーズに進めるコツ

立ち退き交渉は、オーナー様お一人で抱え込むには精神的な負担が大きすぎます。プロの力を借りる際の注意点を整理しましょう。

管理会社ができること・できないこと(非弁行為への配慮)

管理会社は、建物の状況説明や退去の手続き案内を行うことはできますが、報酬を得て「本人に代わって立ち退き交渉(合意形成)を行う」ことは弁護士法(非弁行為)に抵触する恐れがあります。あくまでオーナー様が主役となり、管理会社は「情報の提供」や「事務手続きのサポート」という立場で関わってもらうのが健全です。

仲介会社を「次の住まいのパートナー」として紹介するメリット

これが現場で最も有効な手段の一つです。入居者様にとっての最大の不安は「次の家が見つかるか」です。私たちが運営する店舗のような、エリアの情報に精通した仲介スタッフを「オーナー様の紹介」として入居者様に引き合わせるのです。入居者様は「自分の味方ができた」と感じ、前向きに移転を検討してくれるようになります。

まとめ|資産価値を最大化するための誠実な一歩を

立ち退きは、一見するとオーナー様と入居者様の利益が相反するように見えます。しかし、老朽化した建物に住み続けるリスクは、入居者様にとっても大きいはずです。

適切な相場の立ち退き料を準備し、時間をかけて誠実に話し合うこと。そして、金銭以外のサポート(移転先の紹介など)を組み合わせること。これが、結果として最短かつ最小のコストで解決に至る、唯一の道だと確信しています。

「いくら提示すればいいか迷っている」「入居者への切り出し方に自信がない」というオーナー様は、まずは現状のシミュレーションから始めてみてはいかがでしょうか。長期的な資産価値を守るために、私たちが全力でサポートさせていただきます。

「自分の物件の場合、立ち退き料はいくらくらいが妥当?」
「建替えか売却か、どっちが収益性が高いか計算してほしい」

そんなお悩みをお持ちのオーナー様は、まずは無料のシミュレーションをご活用ください。スタートラインでは、現場の成約データに基づいたリアルな収支分析を行っています。