高層マンションで特に警戒したい自然災害と被害

災害発生時、高層マンションでは通常の集合住宅とは異なる点に気をつける必要があります。いざという時に慌てないよう、まずはどんな被害が起こりうるのか正しく知りましょう。

高層マンションで特に警戒したい自然災害

地震

東京都が想定している地震の1つに、東京湾北部地震があります。これは首都直下型地震の1つで、東京湾北部を震源とするM7.3の地震と予想されています。

湾岸エリアに建つ高層マンションが最も被害を受けると考えられている地震で、震度6強になると予想されています。

地震は停電を引き起こします。エレベーターをはじめ、多くの生活システムを電気に頼る高層マンションでは、停電がより大きな被害につながりやすくなります。

大雨

近年、局地的大雨や短時間に大量の雨が降る集中豪雨が増えています。下水道の処理能力を超えると、道路冠水や地下浸水などが起きます。

多くのマンションは電源施設が地下にあり、浸水すると停電が発生する可能性が高まります。

高潮・津波

湾岸部は、東京湾の最奥部に位置しています。水深も比較的浅いため、高潮の被害を受けやすいという特徴があります。台風の発生する時期は高潮情報に注目するようにしましょう。

高層マンションで起きやすい被害の特徴

地震による大きな揺れ

大規模な地震が発生すると、長周期地震動という揺れが発生することがあります。数10秒の長い周期で、船に乗った時のようなゆったりとした揺れです。

高層マンションでは、この揺れと建物が揺れる周期が一致するとエネルギーが増大し、長時間にわたり大きく揺れます。

すると、室内の家具などが移動したり転倒したりする危険性が高まります。また、過去の地震発生時には、大きく揺れることに不安を感じた高層階の住民が、1階ロビーに移動して寝泊りする事態も発生しています。

トイレが流せない

下水の排水に電力ポンプが使用されているため、停電するとトイレが使用できなくなります。

また、停電していない場合でも、大きな地震が発生した時は排水管損傷の可能性があるため、トイレは流してはいけないことになっています。

過去には、排水管の損傷を知らずに高層階の住民がトイレを流してしまい、下水があふれて下層階が被害を受けたという事例もあります。

エレベーター停止による階段昇降の負担

停電でエレベーターが停止すると、階段の昇り降りが大きな負担となります。外出が困難になり、仮設トイレ利用のための外出や買い物など、日常生活に大きく支障が出ます。

エアコンやインターネットが使えない

オール電化の高層マンションでは特に大きな影響が出ます。地域やマンションのシステムによっては、インターネットも使えなくなることがあります。情報収集に大きな影響が出ます。

断水

高層マンションは、電力でポンプを動かし、受水槽から各階の部屋に水を供給しています。そのため、断水する可能性が高まります。

エレベーター停止が日常生活に大きく影響

いったん停止したエレベーターを復旧させるには、エレベーター保守会社が点検を行う決まりです。東京都は、なるべく早く、多くのビルのエレベーターを復旧させるために、1ビル1台復旧ルールを推奨しています。

電力が復旧してもすぐに全部のエレベーターが動くとは限りませんので、大きな震災が起きてしばらくは、エレベーターは使えないものとして考える必要があります。

買い物や外出が困難になる

高層階の住民にとって、階段移動が大きな負担になります。買い物や外出はかなり制限されてしまいます。

水の確保が難しかったり、特に高齢者の場合、自分の家から建物の外に設置された仮設トイレにたどり着くのが難しくなったりします。

ごみ処理が困難になる

高層マンションは、各階にごみ置き場が設置されています。エレベーターが使用できないとごみの回収ができず、各階のごみ置き場はごみで溢れることになってしまいます。

ごみの問題は切実

災害時でもごみは出続けます。食品の生ごみ以外にも、地震で壊れたものや簡易トイレなどさまざまです。

従来のごみ置き場が満杯になった場合、マンション敷地内のスペースを一時保管場所として利用したり、各家庭のベランダで保管したりする場合もあります。

その時、重要なのがにおい対策です。特に、簡易トイレは使用後ににおいが発生することがあります。なるべくにおいを外に出さない工夫が必要です。

自宅待機が原則

避難所は、自宅で生活できなくなった人が利用する場所です。自宅が倒壊する恐れが極めて低い、あるいは自宅で生活ができる場合は、自宅でライフラインの復旧を待つことが原則です。これを在宅避難といいます。

いくら避難所とはいえ、緊急時に寝具、冷暖房器具など生活に必要なものが十分に揃えられるとは限りません。また、多くの人が一気に集まるので、プライバシーが守りにくい、音が気になるなどの問題が。高齢者や小さい子どもにとっては、自宅のほうが過ごしやすいこともあります。

自宅から必ず避難しなければならないのは、

・建物の倒壊またはその可能性がある時

・火災の発生や近隣から延焼する可能性がある時

・自治体から避難指示が出された時

などです。高層マンションの場合、基本的に建物がまるごと倒壊する恐れは極めて低いとされています。できる限り、自宅で生活ができるよう日頃から備えることが大切です。

避難所では、食料・水・生活物資の配給などを行っています。そのような配給物は、在宅避難者も受け取ることができます。必要に応じて避難所を利用するようにしましょう。

防災用アプリや冊子をチェック!

市区町村など自治体が発信する無料のアプリや冊子では、過去の事例とともに、わかりやすく防災に関する情報が紹介されています。

防災ガイドブックや防災用アプリを入手し、日ごろから防災意識を高めておきましょう。

中央区
アプリ中央区防災マップ
冊子配布場所区役所1階防災課
冊子PDF高層住宅の防災対策PDF
防災パンフレットPDF
港区港区
アプリ港区防災マップ
関連冊子
配布場所
各地区総合支所の協働推進課
区役所防災課
冊子PDF震災対策ハンドブックPDF
江東区
アプリ江東区防災マップ
関連冊子
配布場所
防災センター4階防災課
区役所
・2階こうとう情報ステーション
・2階防災展示コーナー
・2階区民課

図書館
各出張所(防災マップ)
冊子PDF防災マップPDF
集合住宅防災ガイドブックPDF
防災パンフレットPDF
品川区
アプリ品川区情報アプリ
関連冊子
配布場所
区役所防災課
地域センター
冊子PDFしながわ防災ハンドブック
東京都
アプリ東京都防災アプリ
関連冊子
配布場所
無料冊子
駅/消防署/図書館/福祉センターなど
公共交通機関や行政関連施設で入手可
『東京防災』1冊130円
書店や消防博物館などで購入可
(多言語版と電子書籍あり)
冊子PDFパンフレットで学ぶ防災
WEB東京都防災ホームページ


本記事は、2022年2月28日時点で下記資料を参考に作成しました。防災情報は随時更新されますので、必ず最新情報をご確認ください。
出典:
『東京防災』
中央区『備えて安心!マンション防災』
港区『港区マンション震災対策ハンドブック~在宅避難のすすめ~』
江東区『集合住宅防災ガイドブック』
品川区『高層マンション防災対策の手引き』
地震本部 長周期地震動に関する情報について(気象庁)