「希望に合う物件を見つけたが、家賃が予算をオーバーしている」「入居中の物件更新時に、家賃値上げの通知が届いた」など、家賃交渉を考える場面は、誰しもあるものです。
昨今は物価高の影響もあり、数千円単位で家賃が上昇するケースもあり、家計への打撃は少なくありません。
では、家賃交渉はどのように進めれば良いのでしょうか。
今回は「家賃の値下げを交渉したい」と考えている方に、家賃交渉を成功させるコツや準備、断られた場合の対応を解説します。
希望の家賃を手にする、そのヒントとして役立ててください。
そもそも、家賃は交渉して構わないのか

「家賃は固定費であり、交渉の余地はない」「家賃の決定権は物件オーナーにあり、賃借人は言い値を支払い続けなければならない」と考える人も多いかもしれません。
しかし、家賃は交渉可能です。
実際、市場の変動により、設定されていた家賃が相場とかけはなれてしまうケースも、少なくありません。相場の家賃(希望額)にしてもらえないか、と交渉するのは、賃借人の権利です。
ただ、物件オーナー側も、相応の根拠をもって家賃を算出しています。また、物件の運用ビジョンがあり、意図を持って相場以上の家賃を設定している場合もあります。
家賃交渉はして構いませんが、交渉すれば下がるとは限らない点は、押さえておく必要があります。
では、家賃はどのような根拠で定められているのでしょうか。次章では、家賃が決まる仕組みを解説します。
家賃が決まる仕組み

家賃を決定する根拠となる考え方は、3つあります。
- 積算法
- 賃貸事例比較法
- 収益分析法
このうち、よく用いられるのは積算法と賃貸事例比較法です。
積算法
物件オーナーが、物件の建築にかかったコストや維持管理費などを踏まえ、「どの程度の利益を得たいか」に主眼を置いて家賃を決める考え方です。物件からの収益性を重視している点が特徴です。
新築後、できるだけ早期にコストを回収したい意図がある場合などは、相場より高い家賃が設定されることもあります。
ただし、数字を精査し、積算法で適切な家賃を算定するのは、容易ではありません。市場の物件の多くは、次の賃貸事例比較法で家賃を定めています。
賃貸事例比較法
賃貸事例比較法は、物件を周辺の物件と比較し、プラスポイント・マイナスポイントを整理して家賃を決めるやり方です。
「同じ間取りでも、立地が良い物件のほうが家賃が高い」「1階より2階・3階のほうが家賃が高い」といった事例があるのは、この賃貸事例比較法に基づき家賃を設定する物件オーナーが多いことに起因します。築年数や設備、募集時期なども、家賃に影響を与えます。
収益分析法
収益分析法は、物件オーナーが物件から得られる収益に基づいて家賃を設定する考え方です。
投資の側面が強く、商業施設や病院、ホテルなどで利用されています。住宅で収益分析法を利用するケースは、ほぼありません。
家賃交渉が成立しやすいタイミング

家賃交渉は、タイミングが重要です。繁忙期は家賃を値下げせずとも入居者が決まりやすい時期。このタイミングで交渉しても、成功は期待できないでしょう。
家賃交渉が成立しやすいタイミングを、2つ解説します。
入居申込の前
家賃交渉を切り出しやすく、そして成立しやすいのは入居前です。物件を内見し、入居を検討している段階なら、さまざまな相談に乗じて、家賃の値下げも切り出しやすいでしょう。
不動産会社に、「家賃を交渉できるか、物件オーナーに問い合わせてほしい」旨、伝えてみてください。このとき、希望金額も合わせて伝えます。
また、希望金額に了承をもらえたらかならず入居する意志で問い合わせることも大切です。家賃が希望金額に下がらなかった場合は借りない、という点もはっきり伝えましょう。
物件オーナーにとって、家賃は収益の要です。冷やかし半分の気持ちで問い合わせる人よりも、真剣に入居を検討している人のほうが、前向きになってもらえる可能性が高まります。
契約の更新時
入居時に次いで家賃を交渉しやすいタイミングは、契約更新時です。契約更新では、管理会社から更新後の家賃が通知されます。
賃貸物件は通常、貸主と借主の双方が合意して更新される「合意更新」の形をとっており、賃借人が同意しなければ契約は更新されません。
契約更新は、賃貸条件を交渉する絶好のタイミングということです。家賃を含め、不満を感じている箇所があれば、まとめて管理会社に伝えましょう。
ただし、入居時に比べると、交渉の成功確率は下がります。契約更新時に家賃を交渉したいときは、十分に交渉の準備を行いましょう。家賃交渉前の準備事項は、次章で解説します。
家賃交渉の準備
家賃は交渉可能だとはいえ、常識を超えた金額の値引きを問い合わせるのは無作法です。では、相場はどのように調べれば良いのでしょうか。
ここからは、相場チェックを含め、家賃交渉前に準備しておきたいポイントを3つ解説します。
周辺の家賃相場をチェックする
家賃交渉は、「周辺物件の相場と比べて高いと感じるので、下げてほしい」という依頼の仕方がスマートです。周辺物件の相場は、不動産ポータルサイトで調べられます。
suumoやat homeなどの大手ポータルサイトを開き、希望もしくは居住中物件の条件を入力します。最寄り駅や駅からの距離、間取り、広さ、築年数などは、家賃に影響する大切な要素であるため、間違いなく入力しましょう。検索結果を比較すると、物件の家賃相場が見えてきます。
もし、あまりに安い・高い物件がヒットした場合は、その理由を探してみてください。同じ間取りでも、1階中央付近の部屋と、2階角部屋とでは、家賃が大きく異なる場合があります。
また、築年数が経過した物件でも、リフォームを施すと家賃が高くなることもあります。
家賃を交渉する根拠を整理する
次に、家賃交渉の根拠を考えます。「なぜ、家賃の値下げを依頼するのか」、その理由です。理由なき家賃交渉は、そもそも物件オーナーに相談すらしてもらえない可能性があります。
以下は、家賃交渉の根拠となり得る事例です。家賃の値下げは物件価値の低下に直結するため、生活での利便性低下や懸念の増加を伝えると良いでしょう。
- 利便性の高い商業施設が撤退し、買い物に困るようになった
- バルコニー側に大きなマンションが建ち、日当たりが悪化した
- 設備の老朽化が激しい
- 同じ物件で、家賃が安い部屋を見つけた
- 物騒な事件が多く、防犯面で不安がある など
実際に家賃を下げるかどうかは、物件オーナーの判断となります。ただ、長期間の空室が多い・周辺環境にネガティブな変化があったといった物件は、空室リスクが高まります。
入居者を確保したい物件オーナーが、多少の家賃交渉なら応じてくれる可能性が高いと考えられます。
適切な交渉金額を設定する
「交渉するのは自由だ」と、あまりに多額の家賃値下げを依頼してはいけません。数万円もの交渉は冷やかしだと捉えられ、交渉のテーブルに乗せてすらもらえないでしょう。
家賃交渉は、「そのくらいの金額なら、下げても構わないかな」と物件オーナーが感じられる、適切な金額で行うことが大切です。
一般的に、成功しやすい家賃交渉の金額は、2,000~3,000円といわれます。この金額を基準に、近隣の相場との比較、物件の状況を踏まえて、交渉に臨んでください。
家賃交渉の注意点

家賃交渉では、相手に誠実な印象を与えることが大切です。服装は普段着で構いませんが、サンダル履きやポケットに手を入れたままといった、不遜な様相は相手に不信感を抱かせます。
交渉の間に入る不動産会社が、「この人は信頼できる」「家賃を下げてでも住んで欲しい人である」と確信し、物件オーナーに前向きに希望を伝えてくれるような、真摯な態度で臨みましょう。
また、一方的な値下げ要求は、通りにくいものです。交渉する以上は、相手にもメリットがある提案を心がけると良いでしょう。
「交渉が通れば、すぐに契約・入居する」「少なくとも〇年以上は住む予定である」など、物件オーナーが思わず身を乗り出したくなるような条件を提示できないか、検討してみてください。
家賃交渉が断られたら

家賃交渉は、断られるケースも多々あります。家賃交渉が成立しなかったら、どのように対処すべきでしょうか。
他の条件を交渉する
その物件に入居したい・住み続けたい場合は、他に交渉できる条件がないか、考えてみてください。家賃は物件オーナーの長期的な収益に影響するため、値下げは慎重に判断されます。
一方、一時的な収益減、あるいは出費増で済む条件は、受け入れてもらえるケースもよくあります。
以下は、家賃交渉が決裂した場合に提案してみたい、代替案の例です。
- 敷金、礼金の減額
- 仲介手数料の減額
- 更新費用の減額
- 希望設備の導入
- 一定期間のフリーレント など
フリーレントとは、期間を定めて家賃が無料になる制度です。現在の住居と引っ越し後の住居の家賃が重複するなら、1か月でもフリーレントにしてもらえれば助かるのではないでしょうか。
家賃交渉にこだわりすぎず、幅広い視点で希望の条件を伝えてみてください。
別の物件を検討する
入居前の家賃交渉であれば、希望の家賃に下がらなかった場合、別の物件を検討し始めても構いません。家賃交渉をしたからといって、その物件に入居しなければならない、ということはないため、安心してください。
引っ越しを考える
物価高が続く昨今、家賃も例外ではありません。更新のタイミングに家賃の値上げを通知されるケースも増えています。
家賃の支払いが難しくなった場合は、住み替えを検討するのも一案です。以下に、住み続けた場合と引っ越した場合の費用シミュレーションを掲載します。参考にしてください。
現在の物件に入居を続けた場合
たとえば、家賃9万円の物件に契約更新から2年、住み続けた場合にかかる家賃は、216万円になります。
家賃9万円×24か月(2年)=216万円
別の物件に転居した場合
家賃9万円の物件から、家賃8万円の物件に引っ越した場合を考えてみましょう。引っ越しに際しては初期費用や引っ越し費用も考慮する必要があります。
家賃 | 8万円×24か月=192万円 |
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初期費用 | 敷金2か月分:16万円 礼金1か月分:8万円 仲介手数料:4万円 └ 家賃の50%と仮定 |
引っ越し費用 | 10万円 |
合計 | 230万円 |
家賃が1万円少ない物件に引っ越したにもかかわらず、2年間の出費総額は転居しない場合より高くなりました。
ただ、転居後の物件に長く住むほど、この差は縮まっていきます。また、住み替えによって住環境が良くなれば、金銭には代えがたいメリットが手に入るかもしれません。
家賃交渉が成立せず、引っ越しを考える際は、転居にかかるトータルコストを試算し、総合的に判断するようにしましょう。
まとめ
家賃交渉は、近隣の相場を調べ、根拠のある金額で交渉に臨むことが成功の秘訣です。ただ、家賃の値下げは物件の収益性に直結する問題であり、簡単にYESと回答するオーナーも少ないのが現実。
交渉する際は、相手へのメリットも提示しつつ、交渉が成立しなかった場合の対処まで考えておくことが大切です。
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